ベトナム社会主義共和国のテンポラリー・レジデンスカード(一時在留許可証)を解説します。
テンポラリー・レジデンスカード(TRC)の概要
ベトナムのテンポラリー・レジデンスカード(別名:一時在留許可証)は、就労目的で1年を超えて長期滞在する外国人に発行されるカード型の公的滞在許可証です。通称TRCと呼びます。
現地で駐在員や現地採用として、ワークパミット(労働許可証)を持って正規就労している外国人にイミグレーションより発給されます。また、任期中に同行する家族にも発給されます。3ヶ月未満の短期就労の場合は就労ビザ(LD)が発行されます。
その有効期間は2年〜5年までありますが、一般的な就労者の場合は労働許可書の有効期間に合わせて発行され、2年(24ヶ月)有効のケースが最も多いです。尚、1年未満の労働許可書では申請不可です。
投資家ビザを持つ経営者は5年Ver.を取得できるケースもありますが、当局の判断になります。
- べトナムで働く外国弁護士および投資家:最長5年間
- 外国商人の駐在員事務所の所長・投資家:最長3年間
- 就労の場合:最長2年(労働許可書の有効期間に紐付いて発行される)
レジデンスカードの有効期間中はビザ取得が免除されます。TRCは運転免許サイズのカードでビザ(滞在許可証)と身分証(IDカード)を兼ねていることから、財布に入れたりパスポートに貼ったりして常時携帯する場合が多いです。
期限内の出入国無制限での長期滞在が可能となり、晴れてベトナム居住者となります。ベトナムにはロングステイビザ制度が無いので、実質的にはTRCが最長ビザとなります。
レジデンスカードのサンプル
以前は縦型のパスポート大のサイズでしたが、現在は財布に収まるカード型です。素材はプラスチックではなく、簡易的なラミネートです。
パスポート番号、ビザ種別(LDやTT)、登録番号、有効期限などが記載されています。

レジデンスカードの見本(実物は裏表のカード)
取得に必要な書類・条件
基本的には雇用先の企業が申請を行います。手続きを簡素化する為に代理店にアウトソースする場合が多いです。
レジデンスカードの必要書類
- 投資登録証明書・経営登録証明書(または駐在員事務所の設立許可書)の公証版
- 法的代表者/所長の署名確認書
- パスポート(有効期限)
- レジデンスカード発給申請書
- 労働許可書(ワークパミット)の原本
- 背景白の顔写真2枚(2×3cm)
- 住居の賃貸契約書(写し)
- 戸籍謄本(原本)
レジデンスカードの発給条件
労働許可証を取得している事が前提条件です。また、就労ビザ(LD)かビジネスビザ(業務・DN)から切り替えるので入国時に取得している必要があります。また、駐在員に同行する配偶者・子供は家族帯同ビザ(TT)から切り替えます。
取得方法・発行プロセス
基本的には雇用先の企業が申請を行います。労働許可証と合わせて発行までに1ヶ月程度かかるので、手続きを簡素化する為にコンサル会社やビザ代理店にアウトソースすることが多いです。
STEP1. 雇用先の会社の確保
まずベトナム現地法人との雇用契約を結び、勤務先企業が外国人雇用の登録手続きを行います。最初の渡航時は3ヶ月のビジネスビザを取得して入国するのが一般的です。商用ビザの申請には、大使館取得でも空港取得でも招聘状(インビテーション・レター)が必要です。
STEP2. 雇用主が労働局に”労働許可証”を申請
次に、勤務先企業が前述の必要書類(公証済など)が揃えて、申請書を労働局に提出します。
STEP3. 労働局より”労働許可証”の発行
概ね、審査終了と労働許可証発行までに2-3週間程度を要します。
STEP4. 雇用主が必要書類を揃えて”TRC”を申請
そして、勤務先企業が必要書類一式(労働許可証を含)を揃えて、申請書を出入国管理局(イミグレーション)、その他当該管轄機関にに提出します。この時、すでに有効期限内の商用ビザを取得している事が前提です。注意点ですが、TRC申請中はパスポートを当局に預ける必要があります。
駐在員の家族で家族帯同ビザ(TT)を取得している場合、就労者の労働許可証に紐づいて2年間のTRCへ切り替え可能なので一緒に申請します。
STEP5. 出入国管理局より”TRC”の発行
1週間程度でTRCが発行されます。
取得費用・発行料金
一般的には以下の取得手数料がかかります。金額は申請する地域により前後します。
種類 | 手数料 |
有効期限:1年〜2年未満 | đ3,000,000(145USD) |
有効期限:2年〜5年未満 | đ3,500,000(155USD) |
再発行 | 不明 |
更新
労働許可証の更新手続きが完了すれば、簡単にレジデンスカードの更新を行うことができます。一般的には労働許可証とレジデンスカードの更新は同時に行われます。
レジデンスカードの利用・活用方法
一般的なレジデンスカードの利用例を紹介します。

TRCはパスポートに貼り付けて携帯する人が多い
1. 「入国審査でビザの代わりとして提示する」
国際空港や国境のイミグレーションレーンでパスポートと一緒にTRCを提示します。また、日本などの第三国からベトナムに飛ぶ際に、TRCを提示すれば片道航空券で搭乗許可と入国許可が下ります。一般的な観光ビザやビジネスビザの上位互換と言えます。
2. 「地域の公安警察で外国人住居登録する」
ベトナムで外国人が定住するには管轄の公安警察で居住登録します。これはビザ・TRCの有効期限内で更新し続ける必要がありますが、TRCは最低でも24ヶ月の有効期限があるので2年間の登録ができます。
3. 「ベトナムの外資系銀行で口座を開設する」
2018年より在ベトナムのHSBC・Citi・Standard Charetered Bankなどの外資系銀行の口座開設要件として、TRCの提出が義務つけられています。ATMカードやクレジットカードの発行についても同様です。
4. 「ベトナムの銀行で定期預金を組む」
2019年7月より、外国人がベトナムの銀行で定期預金を組む場合は、ビザ・TRCの期限内というルールになりました。
5. 「新車・バイクを購入し名義登録する」
ベトナムで外国人が新車で自動車やバイクを購入する際にはTRCの提出が求められます。購入後の名義登録を行う際にも必要です。
6. 「ベトナム国内のホテル・空港でチェックインする」
国内に限ってはパスポートを携帯していなくても、TRCを使ってホテルや空港で国内線便にチェックインできます。TRCにはパスポート番号やビザ種別などが記載されているからです。
以上、レジデンスカードについて解説しました。